NPO通信No.209

【NPO法人関連ニュースから:5月号】


「ヤングケアラーの支援に取り組む」

 厚生労働省の今年1月の調査によると、介護や世話を担う18歳未満の子ども「ヤングケアラー」について、小学6年生の6.5%が世話をする家族が「いる」と回答しました。日本財団は、多様な困難を抱える子どもたちが安心して過ごせ、将来の自立に向けて生き抜く力を育む「子ども第三の居場所」プロジェクトを全国で進めています。関東地方のC拠点は、多子家庭やシングル家庭、障害のある親子が多く、ヤングケアラーも少なくありません。スタッフが子どもだけでなく、保護者とも丁寧に向き合ってきました。「子ども第三の居場所」C拠点は、子どもの学習支援に取り組むNPOが運営します。日本財団のプロジェクトとして開設し、現在は行政に移管して運営を委託されています。当初は低学年のケアはあまり経験がなく、保育士や社会福祉士からアドバイスをもらい試行錯誤したといいます。生活保護を受けていて、大人はほとんど働かない家庭で育ったある少年の家では、学校に行かないことが普通で、家事や下の子の世話をするヤングケアラーでした。スタッフは、少年とコミュニケーションを取りながら、生活力や学力を確認していき、本人が『自分の名前は書けるようになりたい』と言い、それを目標にしました。少年はまともな食事をしていなかったため、拠点で食べる練習もしました。菓子パンや、ご飯にバター・醤油で小1まで育っていたため、野菜や苦いものを食べたことがなく、カレーは、いろんな味がするのが嫌だそうで、学校の給食も食べられませんでした。拠点で食事をする際に、スタッフが寄り添い、おいしいよ、この食材は甘いよ、苦いものの後はお水を飲んだらいいよ、と声を掛け、煮物などは食材を1種類ずつ食べる練習をしました。これだけサポートしても、他のきょうだいも学校に行っていないため、母親の考えを変えるには時間がかかりました。何より改善されたのは、少年の姉が受験をして、高校に行くようになったことです。NPOの活動と連携し、姉にも、学習支援や入れる学校を選ぶなどのサポートをしました。
(5月2日 日本財団ジャーナル)

 

「特撮の作り手を育てる」

 「第二の円谷英二」の輩出を目指し、特撮文化の魅力の発信や、特撮に携わる人材の育成を進めるために、福島県須賀川市の須賀川特撮アーカイブセンターは市内の中高生を対象にした「すかがわ特撮塾」を開設します。年10回の講義で、特撮技術を使った撮影から編集までを経験し、絵コンテを書いたりミニチュアを作ったりする回も予定しています。「ウルトラマンZ」(2020年)のメイン監督として知られる田口清隆さん、メイキングディレクターの島崎淳さん、特撮美術監督の三池敏夫さんを講師に招き、NPO法人「アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)」(東京都)が協力します。須賀川市は「特撮の神様」と称される円谷英二監督の出身地として、特撮文化の保存や継承に力を入れてきました。2020年に開館したアーカイブセンターは、公開中の映画「シン・ウルトラマン」に「協力」としてクレジットされ、知名度を上げています。撮影手法を研究し、見る人を楽しませる作り手が市内から再び生まれてほしいと、期待を寄せています。
(5月16日 福島民報)

 

「旧日本兵の写真を家族の元へ」

 83年の時空を超えて―。昭和14(1939)年撮影とみられる、中川手村(現・長野県安曇野市)出身の日本兵の写真がこのほど、米国から家族の元に返りました。ネットオークションに出品された写真をイリノイ州の慈善団体が入手し、無償で返還しました。写真の人物は内川芳茂さんで、10年前に96歳で亡くなっていましたが、次女・松井スエ子さん(72)=東京都国分寺市=は「よく戻ってきた。父も喜んでいると思う」と感謝しました。50年にわたって旧日本兵の所有物の無償返還を手掛けてきたNPO法人「キセキ遺留品返還プロジェクト」が、写真を贈りました。プロジェクトは他に、長野県出身者とみられる同時期の日本兵の写真を4点入手していて、引き続き返還先を探しています。内川さんの写真には「昭和十四年十月十九日清化鎮ニテ」とあり、当時、中国の都市・清化鎮一帯で行動していた松本歩兵第五十連隊の兵士たちの可能性があります。内川さんを含めて4人の写真に「飯島上等兵殿」と記され、飯島上等兵に自分の写真を贈呈したとみられます。飯島上等兵の情報や写真は見つかっていません。プロジェクトの代表は、内川さんの写真が本来の場所に戻ったことを喜びました。
(5月16日 市民タイムス)


(NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり)