NPO通信No.212「地域でフードドライブに取組む」
医療や福祉サービスを展開する北水会グループは、デイサービスなどの送迎ルートを活用したフードドライブ「グリーンプロジェクト」を始めました。送迎時に利用者や周辺住民からついでに家庭で余った食品の寄付を募り、茨城のひたちなか、東海、水戸、大洗4市町村にある同グループの約20事業所が参加し、未使用食品を持ち寄ってもらう予定です。グリーンプロジェクトは、高齢者福祉施設などの北勝園(茨城県ひたちなか)が立ち上げ、同園で子ども食堂を運営していることをきっかけに、地域で「お互いさま」といった助け合いの循環をつくろうと考えました。ついでに取り組むのは、運搬にかかるエネルギーを削減するのが目的です。寄付は、送迎車の乗車前に運転手の職員が受け付け、賞味期限が2カ月以上の食品はNPO法人フードバンク茨城へ寄付し、2カ月未満の食品は近隣の社会福祉協議会を通じて地域で必要とする人に届けられます。同園と近隣施設の2カ所で1月、実験的に行ったフードドライブではインスタント食品や缶詰、コメなど2週間で計約45キロが集まりました。
「海の厄介者ガンガゼをパスタソースに」
唐津市肥前町駄竹の漁師と市内のNPO法人「浜-街交流ネット唐津」がタッグを組み、海藻が茂って魚のすみかになる「藻場」の再生に向けた取り組みを始めました。藻場が二酸化炭素(CO2)を吸収する「ブルーカーボン」が注目される中、海藻を食べる“厄介者”のウニ「ガンガゼ」を捕獲し、その身を生かしたパスタソースの開発に乗り出しています。藻場の海藻がなくなって岩場が露呈する「磯焼け」が全国的に深刻化しており、北上してきた南方系の魚類やガンガゼの食害などが原因で、産卵場所や稚魚の餌場がなくなるなどの悪影響を及ぼしています。同NPOがクラウドファンディングで活動資金を募り、4月から漁師11人が取り組み、肥前町の一部の海域で、海藻が覆われる割合を現状の0%から5%増を目指します。年間を通した駆除で環境を整え、海藻の元になる種をまき、ガンガゼの生息状況や藻場の状態を調べ、7月末には岩場に胞子を放って海藻になる「母藻」を地元の子どもたちと投入し、芽が出る冬場に向けて準備しました。パスタソースはガンガゼ約6千個をNPOが買い取って開発しました。地元では、えぐみがあって食べられていませんが、飲食店による試食では「苦みがなく、ウニ特有のうまみがある」と評されたといいます。170食を製造し、8月下旬からの藻場再生に関するクラウドファンディングの返礼品にする予定です。
「施設で暮らす子どもたちに野生のイルカと泳ぐ体験を」
神奈川県横須賀市を拠点に活動するNPO法人「CROP.-MINORI(クロップみのり)」は、25年間に渡り児童養護施設で暮らす中高生の子どもたちに、東京都御蔵島(みくらじま)で自然を体験し、野生のイルカと泳ぐドルフィンスイムやアートセラピーを届けてきました。親と暮らすことが難しい0〜18歳の子どもたちを家庭的な環境で養育するファミリーホーム「クロップハウス」の運営、また親を頼ることが難しい子どもたちが社会を出た後、何かあった時に気軽に相談できたり遊びに来たりすることができる実家のような場所になりたいと、児童養護施設退所後の子どもたちの自立支援を行っています。児童養護施設では、一人の職員が何人もの子どもの面倒を見ます。学校でも施設でも団体生活で、『あれはダメ』『これもダメ』と常にルールに縛られ、大人たちにも監視されているような感じがして、生活の中に自由を感じられませんが、御蔵島のドルフィンスイムに行くと、大人たちが注意したり叱ったりすることもなく、ただただイルカと泳いで、あとはそれぞれが思い思いに過ごす、自由な時間があります。施設で暮らす子どもたちの多くは、一般の家庭と比べて旅行やお出かけなどの経験が少なくなりがちです。そのことで寂しさを感じている子も少なくありません。だけど夏休みに御蔵島を訪れて、学校に戻ってから、『イルカと泳いだんだ!』と友だちに自慢もできます。他の施設の子どもと出会い、交流が生まれ、『自分だけじゃないんだ』と感じられる点も、このプログラムの良い点です。これまでに、のべ500人の子どもたちにドルフィンスイムを届けてきました。 (NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり) |