NPO通信No.213「不登校の子にメタバースの学校を」
何かのゲームのような映像があります。実は、オンライン上に作られた学校です。参加しているのは、様々な理由で学校に行くことができていない不登校の児童・生徒たちなのです。不登校の児童・生徒数は年々増加し、2020年度には、およそ20万人近くにまで上っています。認定NPO「カタリバ」(東京都)が運営するメタバース(仮想空間)上の教室「room-K」は、ゲームのような空間で、アバターと呼ばれる自分の分身を動かして、授業に参加することができます。アバター同士が近付くとカメラが起動し、リモートながら、実際の顔と顔を合わせてコミュニケーションを取ることもできます。現在、6つの自治体がこの仕組みを取り入れていて、学校長が認めれば出席扱いになります。実際に利用した子どもの保護者からは、次のような声が聞かれました。「オンラインの場を有効活用できるのか半信半疑でしたが、子どもが楽しそうに参加している姿を見て、『探していた場所が見つかった』と涙が出ました」。賛成の声がある一方で、ネット依存や不登校の固定化につながるのではないかと懸念する人もいます。同NPOの理事長は「いったん不登校になってしまうと、もう一回、学校に戻るということが、とてもハードルが高い。どんな形であっても、少しずつでもいいので、学ぶことをやめないということ。そして、誰かと話す時間を持つ。これ自体が、とても大切だと思う」と想いを述べました。
「障害者をコチョウラン栽培のプロに」
千葉県富津市で障害者施設などを運営するNPO法人「アロンアロン」は、コチョウランの生産・販売を通し、障害者を栽培のプロフェッショナルに育てて、一般企業への就職を支援しています。障害者は就職先から出向の形を取ることで、環境を変えずに働けます。企業は花代を削減でき、障害者の法定雇用率(2・3%)の達成にもつながり、3年で12人の就職を実現しました。同法人の就労継続支援B型事業所は、年間2万本のコチョウランを生産・販売します。生産を担うのは中度から重度の知的や精神の障害者です。仕組みは、コチョウランの栽培技術を習得した障害者に、同法人の大口顧客への就職をあっせんし、障害者はNPO法人に出向する形で、そのままコチョウラン栽培を続けます。企業はコチョウランを自社栽培したものとして受け取り、栽培スペースの賃料、苗代、配送料を支払います。同法人の顧客は約3000社。大手企業にもなると贈答用に月30鉢、100万円を超えるコチョウランを購入します。「それだけ買うなら、障害者を雇って自社栽培しないか」と提案し、イオン銀行や伊藤忠丸紅鉄鉱、ビズリーチなど12社で就職が実現しました。就職を機に障害者用グループホームから自立に向けてシェアハウスに移った女性は「自分に合う仕事を見つけることができた。大好きなディズニーランドに月1回行ける」と誇らしげに話しました。
「カンボジアの体育教育を支援」
カンボジアで体育の教育に携わる教員らが、岡山市中区の小学校を視察に訪れました。音楽に合わせ元気いっぱいに踊る子どもたちを見つめるのは、カンボジアの小中学校の教員や教育省の職員ら14人です。岡山市に本部を置くNPO法人「ハート・オブ・ゴールド」の招待で視察に訪れました。マラソンの五輪メダリスト、有森裕子さんが代表を務めるこのNPOでは、内戦などにより一度は教育システムが崩壊したカンボジアで支援を続けてきました。読み書き、計算などに比べ体育は、特に指導体制の構築が遅れていた分野だったといいます。視察したのは、岡山大学教育学部附属小学校の生徒が運動会で披露するダンスの練習です。決まった振り付けもありますが、自由に表現する時間も設けられていてカンボジアの教育者には新鮮に映ったようです。スポーツを通じ、健やかな体だけでなく豊かな心も育てる教育がカンボジア全土に根付くよう今後も支援活動が続けられます。 (NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり) |