NPO通信No.215「動画で特殊詐欺を防止」
小学生から80代まで幅広い世代でつくる兵庫県尼崎市の市民劇団「やんちゃんこ劇団」が県警尼崎北署とタッグを組み、特殊詐欺を防ぐための啓発動画をつくりました。子どもたちが詐欺グループを演じ、高齢者をだます手口を劇で分かりやすく紹介します。動画は4本あり、子どもたちが「だまされたらアカーン!」と呼びかけます。劇団は子育て支援のNPO法人「やんちゃんこ」(兵庫県)が、子どもたちに個性を伸ばしてもらおうと、2020年に発足させました。現在は25人ほどが県立ピッコロ劇団員の指導を受け、演劇に励んでいます。今年2月、尼崎北署から「地域ぐるみで詐欺を防ぎたい」と動画作成への協力を依頼され快諾し、ピッコロ劇団員に台本・脚本をつくってもらい、何度も練習しました。動画は、特殊詐欺の中でも被害の目立つオレオレ詐欺や架空請求、還付金詐欺、キャッシュカード詐欺盗の4種類あり、各1分半〜2分ほどです。息子や銀行員、市役所職員をかたる詐欺グループが「携帯電話の番号が変わった」「キャッシュカードを新しくした方がいい」と偽り、ATMを操作させたりカードをすり替えたりする場面などを描きます。やんちゃんこ劇団では発達にさまざまな特性のある子たちが活躍しており、今回も収録時に固まってしまってせりふが出てこなくなる一幕もありましたが、温かく見守る仲間に励まされ、見事に演じきりました。子どもも大人も、詐欺の手口を学びながら懸命に取り組みました。署の担当者は「思った以上の仕上がりで、子どもたちの演技力に驚いた。被害を少しでも減らしたい」と話します。署は11月4日、出演者たちに署長感謝状を贈りました。完成した動画はユーチューブの県警公式チャンネルで視聴できます。
「廃墟を文化遺産にする取組み」
廃虚ファンが集まり、施設の保存や活用の方法などについて考える「廃墟景観シンポジウム」が、神戸市中央区小野浜町のデザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)で開かれました。探検家や写真家、社会学者らさまざまな分野の愛好家が参加し、異なる視点から意見を交わし、魅力を生かすための多様な可能性を探りました。ファンから「廃虚の女王」と呼ばれる「旧摩耶観光ホテル」(同市灘区畑原)が昨年6月、国の登録有形文化財に指定されたことを記念したシンポになります。愛好家にとっては非日常やスリルを味わえるワクワクする場所、「廃墟」。一方で、管理者にとってはトラブルにつながる悩みの種でもあります。そんな場所が、なぜ、どのようにして「観光スポット」となるに至ったのでしょうか。兵庫県神戸市の摩耶山の中腹にある「摩耶観光ホテル」、通称「マヤカン」は、戦前の1930年に建てられ、その後観光ホテルとして、最後は学生センターとして営業してきましたが廃業となり、1990年に閉鎖されました。所有者は、この建物を“迷惑物件”だと思っていたといいます。そこで、所有者に「マヤカンを大事に思っている人たちが大勢いる。ぜひ自分たちの団体で手伝わせてほしい」と、産業遺産の保存・活用に取り組むNPO法人「J−ヘリテージ」(神戸市)で保全、一帯の活性化に取り組む「摩耶山再生の会」で活用、という協働事業が始まりました。まず手を付けたのは、不法侵入など「負のイメージの払拭」です。そのために約300万円かけてセキュリティ会社をつけ、さらに、2017年に登録文化財へ申請することを目指し、リターンに廃墟見学などを盛り込んだクラウドファンディングを実施しました。349人の支援者から、目標金額500万円を大きく上回る727万7千円が集まり、それらの甲斐あって、2021年、廃墟としては異例の「国の登録有形文化財」に登録されました。そしてマヤカンは「廃墟の女王」、一帯に点在する歴史遺構は「マヤ遺跡」と呼ばれ、多くの人が関心を寄せる存在となりました。シンポは、人はなぜ廃虚にひかれるのか、廃虚は文化遺産となり得るのか、マヤカンの今後について−の三つのテーマで行われました。文化財に指定されると建立当時の姿に復元されることが多いことに触れつつ、「マヤカンは廃虚景観を維持した初の文化財になり得る」と期待する声が上がりました。
「10人に1人が飢餓、4人に1人が肥満」
今年で8年目を迎えた、おにぎりアクションが今年も開催されました。みなさんご存じでしょうか?Instagramなどでおにぎりにまつわる写真に#OnigiriActionというハッシュタグをつけると、NPO法人「TABLE FOR TWO(TFT)」(東京都)を通じて、アフリカ・アジアの子どもたちに給食が届くという取り組みです。これまでに約125万枚の写真が投稿され、約680万食を届けた実績があります。1枚の写真投稿につき、5食分の学校給食(100円)を協賛パートナーが提供します。TFTと連携し、世界の食の不均衡の問題について考え、行動するきっかけつくりを進めます。世界の人口8億人が飢餓に苦しんでいるにも関わらず、肥満人口が2倍以上の20億人も存在します。つまり、10人に1人が飢餓、4人に1人が肥満ということです。この食の不均衡を少しでも解消し、双方の健康問題を同時に解決しようとしているのが、このおにぎりアクションです。今年は過去最大となる37の組織が協賛しました。 (NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり) |