NPO通信No.217

【NPO法人関連ニュースから1月号】


「10代向けの社会保障読本」

 人生のピンチに使える公的な支援制度は、実はたくさんあります。しかし、その存在を知らなければ、利用できません。10代の若者に社会保障をもっと知ってもらいたい。そんな願いを込めた本が出版されました。タイトルは「15歳からの社会保障」。2015年にNPO法人「Social Change Agency」(東京都文京区)を設立した社会福祉士である著者は、チャットボットやLINEを活用して困った人を支援する事業などにも取り組んでいます。いわゆる社会保障制度の解説本ではありません。
 「ケガで仕事を休まなくてはならず、医療費と生活費に困った20代のユウジ」「高校生で妊娠し、生活に困ったマミ」「母は昼夜のダブルワーク、祖母と弟の世話をしなければならない中学生のサクラ」。
 中心になるのは、様々な事情で苦境に陥った人のストーリーです。あるとき、インターネットカフェで寝起きする若者が、病院に救急搬送されてきました。生活に困窮して保険証がなく、ぎりぎりまで受診をがまんしていたといいます。医療費が減免される無料低額診療などの仕組みは知らず、「生活保護は若いと使えない」などと制度について間違った理解もしていました。役所の窓口で申請しなければ支援につながらない「申請主義」の壁。社会保障は権利といっても、その利用をきちんとサポートする仕組みがないと、本当のセーフティーネットにはならないのではないか――。そんな思いが強まり、NPOを立ち上げ、今回の出版も、その思いの延長にあります。学校の図書室、子ども食堂、学習支援の場などに本を置いてもらえたら、それが願いだと語ります。
(1月22日 朝日新聞)


「阪神・淡路大震災のモニュメントマップ」

 阪神・淡路大震災の発生から4年後、それらの場所を記録する「震災モニュメントマップ」マップが作られました。市民らの手による地図には、55カ所の碑や遺構が記されています。
 改訂版を出すたび、その数は増え、震災の遺族やボランティアらが集うNPO法人「阪神淡路大震災1・17希望の灯(あか)り(HANDS)」(神戸市)が作成の作業を引き継ぎ、電子化もされました。2022年秋に、HANDSがモニュメントマップを復活させ、発行にこぎつけました。紙製での改訂版は実に21年ぶりだといいます。なぜ今、マップなのか。
 地震から28年がたった被災地では、日に日に「あの日」の記憶が薄れていきます。震災を経験した人が高齢化し、モニュメントの管理が難しくなった地域もあり「撤去したい」という声も聞かれます。しかし、モニュメントは過去の教訓を教えてくれる、来たるべき次の災害に備えるためにも知ってほしいと、同NPO法人の理事は言います。
(1月17日 神戸新聞NEXT)


「初心者の女性がDIYで家づくり」

 ノコギリも持ったことがない女性たちが、荒廃した森林の杉で家を建てる!そんな驚きのプロジェクトが千葉県長柄町で進行中です。千葉県の中央に位置する長柄町。都心から車や電車で1時間半ほどの距離ながら、豊かな自然に包まれたこの地で3年前に始まったのが、超初心者の女性たちがDIYで家づくりを行うという画期的なプロジェクトです。発端は、長柄町の荒廃した植林杉。せっかく植えたのに朽ち果てるか、ムダに燃やされてしまう杉を有効活用し、なおかつ楽しめるものにできないかと、NPO法人「ふるさとネッツ」(千葉県)が木の家づくりを呼びかけました。それに応えたのが、くらし情報メディア「ヨムーノ」(現在「くふうLive!」に改称)で活躍する、地元・千葉県出身で発信力、拡散力に優れたウェブライターたちです。最初は「家づくりをちょっと体験する」くらいの軽い気持ちで参加した部員でしたが、チェーンソーの使い方を教えてもらいながら杉を伐倒し、さらに1年半ほどかけて100本以上の木を加工。丸太を積み上げるログハウスとは異なり、在来工法でつくるので、ホゾや継手などの刻み加工も手作業で行いました。そして昨年の夏、ついに上棟。それまでは家を建てている実感がなかったという部員たちですが、最近では自分たちでも技術の向上を実感し、完成に向け、ますます作業に熱が入っています。
(1月16日 ESSE online)

 


(NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり)