NPO通信No.219

【NPO法人関連ニュースから3月号】


「誤報8割でもOKの児童見守りシステム」

 品川区にある小学校の通学路。友達と待ち合わせて笑顔で学校に向かう子どもたちの首から、白い物体がヒモでぶら下がっています。これは品川区在住の小学生へ入学時に配布されるキッズケータイです。子どもたちが「まもるっち」と呼ぶ小さな端末は、小学校卒業と同時に返却する必要がありますが、区内の公立小学校はもちろん、区外の国立・私立小学校等に通う児童も申請をすれば貸与されます。現在1万8000人ほどの児童が利用しています。ケータイ端末だけでなく、品川区が構築した「通報・管理・見守り」などのシステム全体を総称して「まもるっち」と呼びます。NPO法人の発案で現在のシステムの基となる仕組みが生まれたのが20年ほど前のことでした。児童見守りシステムの仕組みはこのようになっています。
(1)児童が危険を感じたときに「まもるっち」の防犯ブザー用ストラップを引っ張ると、本体から警報音が鳴ると同時に「まもるっちセンター」に通報が入ります。
(2)「まもるっちセンター」と児童の「まもるっち」がハンズフリーで通話が可能となり、児童がどんな状況にあるか確認が行われます。
(3)「まもるっちセンター」が緊急通報であると判断した場合、状況に応じて生活安全サポート隊・保護者・学校・警察・協力者へ連絡します。
(4)品川区内の通報であれば、センターから連絡を受けた人が、児童の元へ駆けつけ児童の保護または状況確認をします。(GPS情報は日本国内であればセンターで把握)
間違えて本体についた防犯ブザー用ストラップを引っ張ると、緊急を知らせるアラームが大きな音で鳴り、子どもたちのほとんどは「誤報」を経験しています。現在でも80%が誤報で、センターが対応できない夜間の通報は17%(その場合は登録された緊急連絡先に連絡が行く)。残りの3%は、「子どもが家に帰ってこない」「まもるっちをなくした」などの保護者や学校からの連絡です。警察に対応を依頼した事案は、令和3年度で14件。それらは不審者からの声掛けや、車との接触事故などであったといいますが、警察に通報すると同時に、児童の氏名と、まもるっちセンターで把握したGPS情報を警察に共有したといいます。連れ去りや児童に対する重大な犯罪行為はまもるっちの運用開始以来これまで認められていませんが、数字に見えないところで抑止効果が出ているといえるでしょう。
(3月10日 YAHOO!ニュース特集)


「NPOが運営する家族留学」

 「家族留学」という言葉を聞いたことはありますか? NPO法人「manma」(東京都)が運営している事業で、1日限定で子育て家庭の中に若者(大学生や新社会人)を迎え入れ、子育てライフを体験してもらうものです。若者は、親と交流し夫婦のパートナーシップを学んだり、実際に育児体験をしてみたりする中で、自らのライフキャリアの選択や悩み解消のヒントを得ることができます。「ワーク(仕事)」に関してはインターンシップや会社説明会など、働き方や仕事内容を知る機会が多々あるのに対し、「子育てライフ」については、体験したり、経験者の話を聞いたりできる機会がめったにありません。家族留学は、受け入れ家庭のためというより、「若者のためのプログラム」ですが、留学生を受け入れてみると、参加者の若者側だけではなく、「家族側」も得るものが大きいことがわかってきました。夫婦にとっては、留学生から質問を受けることで、家族のアイデンティティーや子育ての考え方を改めて見つめなおす機会にもなります。家族留学は、子どもも親も、周囲の人間も、みんなが笑顔になる幸せの循環を生み出す、優しい社会の入り口なのかもしれません。
(3月13日 OTEKOMACHI)


「福島県いわき市でトルコ・シリア大地震被災者支援コンサート」

 トルコ・シリア大地震被災者支援チャリティーコンサートは12日、福島県いわき市のアクアマリンふくしまで開かれました。福島市のNPO法人「チームふくしま」の協力です。県内での開催は初めてで、同NPOを応援しているシリア人ジャーナリストのナジーブ・エルカシュさん(東京都)が呼びかけ、東日本大震災当時の同館とのつながりから今回のコンサートが実現しました。シリアやアラブの伝統的な音楽やポップスを織り交ぜながら演奏し、会場に集まった来館者が演奏に聴き入りました。被災者支援の募金箱も設置されました。
(3月13日 福島民報)

 


(NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり)