NPO通信No.232「日本の移動図書館車をアフリカへ」
老朽化のため広島・竹原市の移動図書館車が引退することになり、地元の小学生によるお別れ会が開かれました。「本バス」の愛称で親しまれた車両は日本を飛び出し、意外な場所で次の活躍が決まっています。移動図書館車の「わかたけ3号」 。竹原市の3代目の車両として2009年春からの15年間、地球1周分を超える約5万キロを走ってきました。主に竹原市内中心部から離れた図書館を利用しにくい地域をまわり、子どもたちに本の温もりを届けてきました。車両の老朽化が進み、新しい車両が導入されたことが「引退」の理由です。ところが“第二の活躍の場”が待っているといいます。東京のNPO法人「サペーシ・ジャパン」が南アフリカのNPO法人と連携して、日本の移動図書館車を送ります。使わなくなった移動図書館車を全国の自治体から譲り受け、これまでに50台以上を譲渡してきました。南アフリカは1990年代初めまでアパルトヘイト=人種隔離政策が実施されました。その影響で今も教育格差が残っており、図書館のない学校が多く、“識字率”は決して高いとは言えません。仲介役を担っているNPO法人は南アフリカの教育格差の縮小や識字率の向上を目的としています。竹原市で本を届けてきた移動図書館車は今後、南アフリカの未来のために「本」と「希望」をのせて走り続けます。
「子ども食堂のギョーザが名物に」
大阪府泉佐野市の子ども食堂を利用する中学生9人が新しいご当地グルメを目指し、ギョーザの開発に取り組んでいます。タマネギやキャベツなど地元特産の野菜を使い、「泉佐野ギョーザ」と名付けました。生徒たちは、NPO法人「キリンこども応援団」が運営する子ども食堂を利用し、自主的な活動として2023年7月からギョーザ作りに取り組んできました。地域の課題として関西空港を利用する旅客の多くが市中心部に立ち寄らない現状を知り、「泉佐野を訪れてもらえるような食べ物を考えよう」と話し合いました。ギョーザとラーメン、ハンバーグの三つに絞り、地元特産の「泉州タマネギ」や「松波キャベツ」を具材に使いやすいギョーザに決めました。開発を始めて約9カ月、泉佐野ギョーザは完成に近付きました。口に運ぶと、野菜のうまみが広がり、少し遅れて肉の食感を楽しめます。キリンこども応援団は商品化を目指して食品会社と交渉中で、味の改良を続けています。後押しする市は2024年度中に泉佐野ギョーザなど各地のギョーザの食べ比べを楽しめるイベントの開催を計画しています。千代松大耕市長は「飲食店ですぐに出せるほど完成度が高い。全面的に売り出して商品化され、泉佐野の名物になってほしい」と期待しています。
「NPO法人が再現した宿場町のジオラマ」
国の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に選ばれている今庄宿(福井県南越前町)の昭和初期の街並みを500分の1で再現したジオラマが同宿で展示されています。古民家の保全活動を進める地元団体が古老への聞き取り調査などを基に、宿場町として栄えた当時の風景をよみがえらせました。550にも上る板葺(いたぶき)屋根の民家など建物群のほか、明治期の北陸線開通に伴い整備された今庄駅などを緻密に表現しています。今庄宿は、福井藩主結城秀康が旧北国街道に宿駅を整備したのが始まりです。宿場町としてにぎわいを見せ、多くの旅人を迎えました。北陸線が開通すると蒸気機関車が行き交うようになり、交通の要衝として発展しました。NPO法人「今庄旅籠(はたご)塾」が町の委託を受け、2021年春に写真や図面の収集など調査を開始。当時を知る住民への聞き取りも行ったところ、資料にはなかった芝居小屋や銭湯の存在も判明しました。ジオラマは縦1・2メートル、横2・3メートル。街道沿いには、石を上に置いた板葺屋根の民家や、防火のために設けた「卯建(うだつ)」のある町屋が軒を連ねます。歴史と伝統が息づく町に、近代的要素を含んだ建物が溶け込んでおり、芝居小屋や銭湯、今庄小学校、寺院も再現し、往事の暮らしぶりの一端を伝えます。
(NPO会計税務研究協会 事務局 金森ゆかり) |